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保存するか、抜歯してインプラントにするか

北海道と比べ暖かな陽気ではありましたが、春の強風が冷たく吹く東京は秋葉原にある 富士ソフト アキバプラザ にて、㈱アストラテック主催による MIchael K.McGuire先生特別講演会 を聴講しました。タイトルのとおり講師はアメリカでご開業している MIchael K.McGuire先生です。先生は元AAP会長(American Academy of Periodontology:アメリカ歯周病学会)も歴任していらした方です。

 

会場に行った時は既に8割方席が埋まっていたため、仕方なく前から2番目の席で受講。この会場は小型シアター(シートも映画館仕様)だったため、目の前の大型スクリーンに酔いそうな感じでした。昨年同じ秋葉原のUDXビル(JR山手線線路を挟んで隣にあるビル)で講演会を受講した時と同じような会場造りだったことをとふと思い出しました。

 

今回は上顎前歯部の審美性インプラントについてのお話でした。

 

虫歯や歯周病が原因で歯を抜歯する場合、炎症反応によって周囲歯槽骨に骨吸収を起こしていることが多く、抜歯してインプラントを埋入したくても骨が失われていることは日常でもよくあります。特に顕著なのが上顎歯槽骨です。上顎歯槽骨の頬側骨は非常に薄く、抜歯後歯槽骨が吸収することが多々あります。

 

上顎前歯歯槽骨の頬側骨が吸収してしまうと、歯肉も大きく退縮してしまいます。骨も歯肉も足りない状態からインプラント治療を開始する程、難しい治療はありません。

 

骨が足りないときはGBR法を行ない、歯肉が足りないときは歯肉結合組織移植術で歯肉を移植します。インプラント埋入手術のほかに骨や歯肉を造る手術が加わるため、患者様の負担(施術による体力、精神、そして時間)が増します。

 

骨や歯肉の吸収が最小限になるよう、予後に不安のある歯は早々に抜歯してインプラントを埋入する考え方もあります。歯を保存するか、インプラントにするか治療法が分かれるところです。

 

しかし、アメリカでは、歯の修復治療の予後よりインプラント治療の予後の方がいい(インプラントの成功率は約97%)ということでインプラントを選択する率が高いそうです。もちろん、日本と異なり、アメリカの医療制度や訴訟の問題と医療を取り巻く環境の違いもあります。

 

確かに、周囲の歯周組織を温存した状態でインプラント治療を行なった場合、歯肉の形態もより自然に天然歯の状態に近づけることも可能となり、審美的に満足のいくインプラント治療が行なえます。機能させるだけではなく、審美性を高めていくことで、よりQOL(クオリティー オブ ライフ)を高めることが出来るからです。

 

虫歯や歯周病が原因で歯を抜歯する場合、虫歯や歯周病の歯を治療して保存するか、抜歯してインプラントにするか、世界的にも意見が分かれるところです。

 

そして、今回講演者として参加した 二階堂雅彦先生 からは、歯周病治療における再生療法の報告もありました。それは、アメリカで販売されているPDGF製剤(Platelet Derived Growth Factor:血小板由来成長因子)を応用したものでした。10年に一度新しい術式や材料がこの世に出ることを仰っていましたが、新しい歯周組織再生法や審美性を兼ね備えた前歯部インプラントが今後より一層注目を集めていきそうです。